あいたで

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​​※注意※
このお話は漫画で書き起こそうと思って書いたプロットを小説風に仕立て直したものです。
たぶん漫画では描き起こさないと思います…すみません

​​良く晴れた空、どこかの学び舎の昼休み。
​​Mr.KKは軍をこっそりぬけて自分が卒業した学舎へと抜け出してきた。
​​そこの校庭には大きな桜の木が一本植わっており、昼休み、いつも同級生がそこに座って昼飯を食べているのを彼は知っていた。
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​​「なぁ、“〜〜〜〜〜〜”って英語わかるか?」
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​​出会って早々に難しい外国語を並べたKK。それに対して相手はちょっと困惑しながら口を曲げる。
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​​「は?なにその無茶苦茶なの、もう一回言って」
​​「だから、“〜〜〜〜〜〜〜”だったかな?」
​​「うう、なんとなく分かったけど、それ軍事関係だろ…、ほんと毎度聞きにくるけど部外者に教えていいのかよ」
​​「お前さんならバラさないって分かってるからな。で、なんて意味?」
​​「ええ、と。”〜〜”が、こうで、たぶん”〜〜〜〜”だから、”――――――――”だと思うぞ」
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​​頭が痛い、と思いながらDTOはすらすらと翻訳していく。彼はこの学び舎で外国語科を教える教師だ。
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​​「あいよ、あんがとさん。助かるわ〜、うちの情報担当より優秀、お前、ほんとに軍部こねぇ?」
​​「…ガキの頃は、軍人に憧れはしたさ。お前と竹刀持ってやりあったのも覚えてる…けど、俺はこれからこの国で育つ幼子たちのために働きたい、その気持ちは変わらん」
​​「まぁ、何度聞いても同じか。俺もお国のために働きてぇ気持ちは変わらんな」
​​「ああ、互いに道は違えどやっていることは同じさ」
​​
​​他愛もない会話をしながらDTOは昼ご飯を平らげていく。包んであったおにぎりは最後の一口となり、それを放り込みながら空を見上げた。
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​​「まぁな。…んじゃそろそろ戻らねーとな。訓練の時間だ。こっそり抜け出してきたからな」
​​「またかよ!」
​​「そりゃそうさ、規律厳しいからよ。…で、今日の夜は非番なんだ。飲みに行かないか?」
​​「あぁ、構わねぇよ。夜9時に新宿のバー紫でいいか?」
​​「ああ、いいぜ。ちと遅れるかもしれんがな」
​​「いつものことだわかってる」
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​​なぁ、と言いながらDTOはKKの手を掴む。
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​​「お、どうしたよ?」
​​「訓練でも人は死ぬ…、気をつけてな…。こんなとこで死ぬんじゃないぞ」
​​「俺だって訓練なんかで死にたかねーよ、死ぬならお国守って死にてーな」
​​「…それでも俺は生きて帰ってきてほしいけどな…。学び舎(ここ)にいるから、いつでも待ってるぞ」
​​「ああ、そいつは嬉しいね。…俺たちの育った学び舎だからな」
​​「あぁ、そうだな…」
​​
​​そう言ってKKは来た道をすっと消えていき、DTOはその後ろ姿を少し眺めた後、職員室へと戻って行った。
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​​夜。乏しい蛍光灯も集まれば眩いものとなる繁華街の一角。
​​そこにバー紫はある。
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​​「しまったー。抜け出すのに30分もかかっちまった、出来上がってないといいんだが」
​​
​​バー紫にたどり着いたKKだったが、引き戸を開けるとカウンター席にはうつ伏せで寝ている待ち合わせ人がいた。
​​あぁ、こりゃだめだ、なんて思う。
​​
​​「あー、こいつ日本酒飲んだのか?」
​​「あら、そうよ。なんでも生徒の答案が良かったみたいで、機嫌よく飲んでたわぁ」
​​
​​バーのママである紫は気分よく言う。
​​KKはため息をつきながら隣に座った。
​​
​​「ちっ、まったく。日本酒は酔いやすいんだから黙ってビール飲んでりゃいいものを」
​​「あらあら、私たちも知ってるから止めたのよ〜。でもとってもご機嫌だったので、止められなかったわ。今日という日にかんぱーい!って言って熱燗3合あけちゃったわ」
​​「熱燗か…まぁ運がよけりゃ次の日残らんな。あーあー、一人晩酌かよ」
​​
​​あら、注いであげるわよ?と紫は言う。
​​グラスを拭きながらKKの前に一つ、ビール瓶も一本置いて。
​​
​​「いやいい、ダチと飲みたかったもんでな。次回にとっておくわ」
​​「あ〜ら。残念」
​​「ま、べっぴんさんについでもらえるのは嬉しいがね、今日は気分が乗らねぇってだけよ」
​​「うふふ、軍人さんも大変ね」
​​
​​その後も相も変わらずKKは軍部を抜け出しては、自分たちの学び舎にきてはDTOをからかったり困らせたりしていた。
​​DTOもおっかなびっくりしつつも同級生との楽しい日々を過ごしていた。
​​
​​そんなある日、唐突に開戦はされ、一部は火の海となるのだった。
​​DTOはそんな中ではあったものの、とある女生徒見合いをして結婚することとなった。
​​
​​「戦争が始まった、がそんななか俺は結婚をした。お相手は見合いで決まった人。
​​ただ、戦時下だったから。こっそりとあげたものの、俺はあいつのことが気がかりだった」
​​
​​戦争も無事に終わり、終戦となった。
​​だが待てどもKKはあの桜の木の下にやってこない。不安は大きくなりつつあった、ある冬の昼。
​​
​​「久しぶりだな、生きて帰ってきたぜ」
​​「けい…!終戦したのは知ってたが…その、てっきり…」
​​「ばかいえ、こんなとこでくたばるかよ。俺も結構戦果をあげたんでね、お上に食いついたってとこ。このままお国を変えたいねぇ」
​​「あはは、そうなのか。お前も随分と立派になったな。…なんか同級生から遠のいちまったな…」
​​「やめてくれよ、唯一気の許せる相手がお前だってーのに、ここでお上の将校って意識されちゃぁ俺の気がもたねーぜ」
​​「ははは、そういうならあの時のままだな。俺はお前の同級生で、最高の親友(ダチ)だぜ?」
​​
​​互いに手をぐーにして、こんっとする。そんな何気ない日常にDTOはほっとしていた。
​​ああ、またいつもの毎日が戻ってくる、そう思っていた。
​​

​​月にがたち災禍が襲う。 ​​台地は怒号のようにうなり、人々は悲鳴を上げていた。
​​DTOたちが住む地域も多大なる被害がでたものの、その中で一番悲しみの渦中にいたのはDTOだった。
​​

​​さらに月日がたち、某所の墓地、墓場の前にて。
​​DTOはKKをつれて、嫁の墓の前にいた。
​​
​​「嫁さん、なくしちまったのか。まだ顔も見たことなかったんだがなぁ」
​​「美人できっぷのいい女だったよ。子供には恵まれなかったがね」
​​「そうなのか、まぁご時世的にしゃーないな。…あぁ、なんだ、その、こういうときになんて声かけリャァいいのか分からんが、…ひとまず飲みに行くか?」
​​「…ああ、慰めや励ましもらうよか。そっちの方が気分いい。お前は軍事大丈夫なのかよ」
​​「ちぃっといいとこついたんでな、夜は融通きくよ、状況にもよるけどな」
​​「深く聞かないでおくわ、怖いから…。じゃ、夜9時に新宿で、いつもの場所な」
​​「あぁ、そうだな」
​​
​​季節は巡り巡って、春。
​​あれから特に目立って厄災は起こるわけでもなく、平穏に時間は流れて行って時代は変わろうとしていた。
​​いくつきもの歳は流れ、彼も彼もみないい具合に歳をとっていた。
​​ここ数年、KKを見ていなかったDTOは不安でもあったが、彼のことだ、ひょっこりとあ現れるだろうと思いながら、いつもの桜の木の下で昼食をとっていた。
​​
​​「あれ、珍しいな今日は私服なのか。非番か?」
​​「ああ、そんなとこだ。お前はこの場所が好きだな」
​​「ああ、この桜の木も随分でかくなったよな。色々とあったのによ。
​​あ、なんかこの木、最近噂だってよ、なんでもこの木の下で女子から告白されると恋が叶うんだとさ。青いよなぁ」
​​「ははっ、そいつはぁ青いな。青いついでに羨ましいわ…」
​​
​​から笑いをしながらKKはDTOの隣に座り込んで、ひょいっと横を向いた。
​​いつものおにぎりをこさえた教師は、いいねぇ、なんて苦笑しながら包みを開けている。
​​
​​「墓まで持っていこうと思ってたんだが、後悔するからやめとくわ」
​​
​​そういうとKKは相手の頬に手を添えて軽く口づけをした。
​​何の前触れもなく行われたそれにDTOは状況が読み込めない顔をした。
​​
​​「は?あ?え?ん?ちょと、えっ、なんで、また」
​​「わからん、いつお前のことが好きになったのか、覚えてない、が、きっと居心地がいい、が恋愛に昇華したんだろうな、これ」
​​「え、いや、その、そんなこと言われても、されても困る…俺はあいつ(奥さん)を、忘れられん」
​​「ああ、いいよ分かってる。最初で最後だ、だから許してくれ。もう会いにもこねぇからよ」
​​「え、いや。別に俺はきてもらっても構わないぞ?」
​​「ふふっ、お人好しだなぁ、ったく。じゃ。時間できたらまたくるわ」
​​「今日の夜はいいのか?」
​​「今日の夜はちと無理だわ。また今度な」
​​「あいよ」
​​
​​まったく、なんだよ。いきなりキスして好きだなんだって…。
​​気持ちは、嬉しいけど、複雑だ。ずっと親友だと思ってたし、それに、俺はあいつ(奥さん)を裏切れないし…。
​​どうしろってんだよ、まったく…。
​​空は雲一つない青空が広がっている。DTOは頭を書きながら少しだけ、ほんの少しだけ耳を赤くしていた。
​​
​​「げほ、げほっ…。ああ、まったくなにしてんだか」
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​​ああ、きっと今日うまく病院を抜け出せる機会があったのは、このためだと思いたい…。
​​ああ、なんか、気の利いたこと、言えりゃ良かったんだけどなぁ。
​​そうだなぁ、例えば“あいらぶゆう”とかな。
​​

​​数日後。
​​
​​電報が届く、宛先は病院。
​​KKがうわ言のようにDTOの名前を呼んでいたから電報をだしたようだ。
​​
​​「あ、あの、ミスターの様子は!?」
​​「それが、その先ほど息を引き取られまして…」
​​「な、なんで!俺何も聞いてないぞ、お前なんだよ!何黙って勝手に先に死んでんだよ、おい。ふざけんな!」
​​
​​ベッドに向かって吠えながら、それを見かねて先生や看護師に止められるDTO。
​​
​​「お、落ち着いてください!彼は結核を患っていたのです…。結核は…」
​​「けっ、かく…」
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​​そんな、なんてこと。
​​ちょっと前の話だ。生徒が結核であることをうちあけきた。
​​
​​「先生、私、山で養生します。ここでの生活は本当に楽しかったです」
​​「…そんな暗い顔するな、気っと治るさ。治ったら小説家になるんだろう?手紙だすから、そんなに暗くなるな。頑張ろう?」
​​
​​ぷっつりと、生徒のことがよぎった。まさか彼女より早いだなんて、そんな。
​​
​​「う、うわぁぁあああああ!!!?な、なんで、そんな、こんなことって、あぁぁあっ!!!!」
​​「誰か鎮静剤を!早く!」
​​
​​荒れた病院から数日たって、DTOは身寄りのない彼の為に墓を一つ用意した。
​​葬儀は病院側とでこっそりと行われ、この墓を知るのは彼が軍を務めていたころの何人かとDTO一人。
​​
​​「なんだよぉ、お前…。人にあんなことしといて。先に逝っちまうのかよ…会いにこねぇと思ってのは、養生してたからか…。
​​なんで、もっと。早く言わなかったんだよ…、そうすりゃもっと。楽しいこといっぱい、あっただろうに…。
​​
​​ばっ、かやろぉ…」
​​
​​墓に花添えて、DTOは涙するわけでもなくただただ悔しい気持ちでいっぱいだった。
​​

大正浪漫のハイカラ男子
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